核抑止という妄想【菅首相が広島で会見「核抑止力は引き続き必要」】

菅首相が広島で会見「核抑止力は引き続き必要」
菅首相表明「核なき世界、先頭に立って」


もはや言っていることが矛盾だらけの支離滅裂である。
菅のアタマの悪さは自民党政治家に匹敵すると述べても過言はなかろう。


自民党政治家よりも「有害さ」は少ないと思っていたが、
先の「消費税論議」にしても、ここまで論理破綻した発言を繰り返されると、
「無知は罪悪の根である」と述べたクリスツィアン・ヴォルフ(1679−1754)を
想起せずにはいられない。



さて、去年も書いた覚えがあるのだが、「核抑止」など妄想に過ぎない。


 まず強調しておくが、核兵器はいくら詭弁を弄しても、
 人類史上最悪の大量破壊・虐殺兵器であることには間違いない。
 核兵器の研究・開発・所持は、何をどう言い訳しても目的は大量破壊・殺戮であり、
 人類の叡智を否定する行為に他ならない。
 このようなモノの所持を続けて、果たして人類の知的営為に資することがあるだろうか。
 答えは否である。



冷戦終結後、核抑止論についても
国際政治(バランスオブパワー)の中での位置づけが変わっているのが現実であり、
むしろ問題は、かつての冷戦構造下の勢力均衡とは異なり、
テロリズムの危険性、昨今は非対称的な戦争が増えていること、
核の拡散が続いていることだろう。


しかしこれらは、かつての冷戦の負の遺産であり、
ひたすら人類滅亡の競争を続けた結果生じた、つまり予め想定できた帰結である。


政治家や保守系論者を気取ったネット上の阿呆ども(ネット右翼ネトウヨ・ネトクズ)が
口をそろえて述べ立てる核抑止だが、
これは全く論理的にも現実的にも破綻した軍事施策である。


こやつらの間では「アメリカの核の傘に日本は守られて来た」という、
もはや信仰に近い論が定着しているが、
旧仮想敵国であったソビエト(現在はロシアや中国)から日本が核攻撃にさらされた時、
果たしてアメリカは「核の傘」という伝家の宝刀を抜いただろうか?
可能性は限りなくゼロに近い。
アメリカが攻撃に出れば、ロシアや中国も報復に出て、アメリカが焦土に化すのだから、
そんな選択をアメリカがする訳がない。
日本は捨石に使われて終わっただけだろう。


しかし、これが現実の政治(マキャベリズム)における冷徹な結論である。
政治家やネット上の阿呆の群れは「現実主義」をやたらと気取るが、
上記のような現実的な考慮すら実はしていないだろう。
いや、そういう思考能力すら持ち合わせていないに違いない。


アメリカの考えていることは結局は御都合主義である。
かっこよく言えば政治の王道であるマキャベリズムだ。
世界の核保有国とは核軍縮の交渉をしながら、
東北アジア地域での政治的・軍事的覇権を維持するために、
こちらでは相変わらず古臭い「核抑止論」を持ち出して来て、
それを信じる阿呆ども(菅もそうだが)がいまだに存在してしまっている。


確かにここ数年来続いている中国の急速な軍拡は、
東北アジア地域の安全保障にとって最大の難問だろう。
だが、それに負けず劣らず、アメリカは日本・韓国・台湾方面へと自軍を展開し、
中国を充分過ぎるほどに刺激して来たのではないか。
中国が軍縮について全く考慮しないのは当然の流れだろう。
それが中国のマキャベリズムなのだから。


 ややこしいのが北朝鮮である。
 通常兵器を動かすオイルもないという状態にも関わらず、
 ミサイル発射実験や核実験までやっているのだから。
 (しかし最終的に本当に核実験が行われたのか確証は取れたのだろうか?)
 ちなみにこの国のやっていることは、
 先の韓国哨戒艇撃沈事件といい(これも確証は得られていないが…)、
 かつて65年前まで極東に存在した泡沫軍事国家を彷彿とさせる。


それでもなお「核抑止論」を信じる阿呆どもは、
かつての「キューバ危機」という事件を思い出しておくべきだ。
戦争が回避されたが、あれは「核による抑止」が働いたのではなく、
「政治的な駆け引き」によって戦争が回避されただけではないか。


そもそも「キューバ危機」の勃発自体が、核抑止論の破綻を示している。
もしかして全面戦争に至ってないから有効とでも言い出すのだろうか。
更に現在進行中の事項として、北朝鮮、イランと、核の拡散もある。
まったく抑止などされていない。


政治家やネット上にはびこる阿呆どもは、まず事実から学ぶべきである。



http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100806-OYT1T00489.htm
菅首相が広島で会見「核抑止力は引き続き必要」
(読売新聞 - 08月06日 11:49)
 菅首相は6日午前、広島市内のホテルで記者会見し、同市の秋葉忠利市長が平和宣言で「核の傘」からの離脱を求めたことについて、「国際社会では核戦力を含む大規模な軍事力が存在し、大量破壊兵器の拡散という現実もある。不透明・不確実な要素が存在する中では、核抑止力はわが国にとって引き続き必要だ」と述べ、否定的な考えを示した。
 11月の来日が予定されるオバマ米大統領の広島、長崎両市への訪問については、「大統領自身が『訪問は非常に意義深い』と発言されている。私も実現すれば大変意義深いと思う」と訪問への期待を示した。仙谷官房長官は6日午前の記者会見で、「大統領が来られる時にどのくらいの日程を取ることができるのか。(訪問を求める)広島市の要望も含め、話し合いをしなければいけない」と語った。
 仙谷氏は秋葉市長が非核三原則の法制化を求めたことについては、「原則を堅持する方針に変わりはない。わが国の重要な政策として内外に十分周知徹底されており、改めて法制化する必要はない」と述べた。


http://mainichi.jp/select/today/news/20100806k0000e040032000c.html
広島原爆の日菅首相表明「核なき世界、先頭に立って」
毎日新聞 - 08月06日 11:53)
 菅直人首相は6日午前、広島市の平和記念式典であいさつし、「唯一の戦争被爆国である我が国は、『核兵器のない世界』の実現に向けて先頭に立って行動する道義的責任を有している」と表明。オバマ米大統領が昨年4月のプラハ演説で唯一の核使用国の「道義的責任」に言及したのに呼応して核軍縮・不拡散に積極的に取り組む姿勢を強調した。首相はこの後、同市内で記者会見し、秋葉忠利広島市長が平和宣言で「核の傘」からの離脱を求めたことに関し、非核三原則を堅持するとした上で「核抑止力はわが国にとって引き続き必要だ」と語った。
 昨年9月に民主党政権が誕生して初めての式典。首相は、あいさつで式典に初参列した潘基文(バン・キムン)国連事務総長とルース駐日米大使の名前を挙げて歓迎の意を示すとともに「日本国民の、二度と核による被害をもたらさないで欲しいという思いを受け止めるよう祈念する」と述べた。これまでの首相あいさつは、広島の復興に敬意を表しつつ核廃絶に向けた日本の努力をうたうものだったが、70カ国以上の各国代表に直接呼びかけるスタイルとなった。
 また、被爆者が「非核特使」として、国際会議などで日本を代表して発信する枠組みを考えることを表明し、市民運動出身の首相らしさをにじませた。被爆者支援については、「法律改正による原爆症認定制度の見直しについて検討を進める」と前向きな姿勢を示した。胎児の時に被爆した人への支援強化にも取り組む考えを示した。
 首相は会見で、オバマ大統領の11月の訪日の際に広島訪問を求めるかを問われ、「実現すれば意義深いが、私から『こうすべきだ』と予断を与えることを言うのは控えたほうがいい」と述べ、米側の判断にゆだねる考えを示した。非核三原則の法制化については「私の内閣でも堅持することに変わりはない」と述べるにとどめた。【野口武則、倉田陶子】